仮面ライダージオウ~祝え、新たなる特撮シーンの誕生を!~

f:id:kazuma0919:20180921230803j:plain
出典:仮面ライダージオウ | 東映[テレビ]




\ カメーーンライダーーーー、ジオウ! /

\ 祝え、新たな王の誕生を!! /



2018年。平成仮面ライダーも、もはや20作品に到達。ギリ20代前半である自分が幼稚園くらいの頃から放送が開始され、様々な切り口で商売ストーリーを展開させてきた子供向けの長編ドラマシリーズ。大学3年生の頃から何となくハマり始めて今まで応援してきたが、非常に興味深いシリーズではある。


記念すべき20作目の仮面ライダージオウは、いわば歴史改変ものである。



■あらすじ モニュメンタルな物語~ライダー王に俺はなる!!



【OFFICIAL】Shuta Sueyoshi feat. ISSA / Over “Quartzer”OPの曲。AAA 末吉秀太とISSAのコンビは過去のライダー楽曲を知る人には嬉しく、歌詞にも過去作を彷彿とさせるワードが含まれている。


ソウゴ奥野壮)は、時計店クジゴジ堂を営む大叔父と暮らす高校3年生。進路を聞かれて「俺は王様になる」と本気で答える、ちょっぴりぶっ飛んだ(?)青年。そんな彼の前に謎の青年が現れ「今日はキミにとって特別な1日となる。ただ、赤いロボットには気をつけたほうがいい…」と奇妙な言葉を告げた直後、“予言”どおり赤いロボットが出現。突然の攻撃を受ける。


自転車で必死に逃げるソウゴ。彼が追い詰められたその時、同じ型の黒いロボットが出現、ソウゴを乗せ逃走する。
時空を移動するロボット=タイムマジーンを操縦する少女のツクヨミ大幡しえり)は、自分が2068年の未来からやってきたと告げる。


彼女が生きる時代~50年後の未来にはオーマジオウという魔王が君臨。人々を苦しめ、希望のない世界を創り出すオーマジオウはソウゴの未来の姿だという。ツクヨミらは魔王の支配から逃れるためレジスタンスとして戦っていたが、その強力な力に圧倒されるのみ。戦士の一人ゲイツ押田岳)は赤いタイムマジーンで2018年にタイムスリップし、過去の魔王=ソウゴを亡き者にして歴史を変えようとしているというのだがーーー。

■ 平成ライダーシリーズ 目指した方向


平成仮面ライダーの歴史は言うなれば「悪目立ちの歴史」である。本作のマスクデザイン、顔面に「(カメン)ライダー」とあるように、作品が重なっていくにつれ明瞭なカッコよさより「インパクト」「話題性」をモットーに諸々が構築されていった。まぁ、初代の人だってバッタ男だしね。重々しいテーマを扱いながらも子供に向けた作品であるからし放送コードの縛りや販促(玩具の売り出し~楽しいときを作る企業、バンダイとの共謀ですね)に目を配りながら進行する、ある種ちょっと変則的なヒーロー史。だが、限定要素の多さ故に磨かれてきた独自の技巧・演出の面白さに惹かれるファンがいるのも事実である。私もそのうちの一人だ。


1クール約50話近くある作品にも関わらずシリーズ構成(各脚本家の具体的な選定・指示、各回エピソードの配分、脚本家からシナリオ修正等を行う仕事)が存在せず視聴者のノリやテンポ感を重視。反響の良かった要素を伏線として回収するなどの方式でストーリーを発展、今日まで放送が続けられてきた。

よく言えばまぁ全編ライブ感に満ちていて、悪く言えば行き当たりばったりの作劇で無理やりひとつのお話として成立させられたような作品もある。長い放送期間が用意されているだけあって「ちゃんと追いかけるからこその楽しさ」があり、俳優たちがめきめきと上達・成長していく様や徐々に決定づけられていくキャラクターの方向性込みで楽しめるといった独自の売りが存在する。


また、毎回のプロットはガチガチの空想科学(その大体が侵略型SF)だが、きちんとその中に仮面ライダー」の文脈が継がれて行っている部分にも大きな魅力がある。「悪の力を以て悪を討つ」ヒーロー像、「力を持つことの責任」と「正義感の対立が生む争い」。これは一期と呼ばれるゼロ年代のシリーズに色濃く、特に龍騎ファイズあたりがその粋でとても分かりやすい。


仮面ライダー龍騎 Blu‐ray BOX 1 [Blu-ray]

仮面ライダー龍騎 Blu‐ray BOX 1 [Blu-ray]


■ タイムジャッカー


本作におけるヴィランタイムジャッカ―、及びアナザーライダーである。世界を牛耳る王、オーマジオウの他に”新しい王の存在”を擁立せんとする一派・タイムジャッカ―。このヴィラン達が過去に飛び、ワケありの一般人にその時代に活動(メタっぽく言えば放送)していた過去ライダーの力を授ける。

すると歴史が変動、ライダーだった人物(過去作のライダー)は力と戦いの記憶を失い、授けられた人間はその力を扱う怪人・アナザーライダーへと変身する。主人公はアナザーライダーを倒すためにその元となったライダーの力で戦い、勝利後はその力を譲渡される形でその時代を後にする…。この点がミソなのだけど、戦闘に勝利しても過去のライダーにその力は戻らず、歴史は変わったままなのだ。実質的に主人公がその特性を継承する形でその時代のターンは終わる。


仮面ライダージオウ』は当初部分的に明かされた設定から「過去のライダーと交流し、それぞれの境遇を学んで」主人公が強くなっていく物語なのかな?と大方が想像していた。しかし実際は大きく異なり、ライダーの力を借りて怪人を倒した主人公がそのまま彼らの能力、ライダーとして戦ってきたという事実すらガジェットとして奪う形で冒険を続けるという、まさにちょっとした逆張り劇です!というものであった。このことが1~2話で明かされるとネット上には動揺の声が駆け巡り、毎年恒例の…いやそれ以上の面白い議論を呼んでいた。


まぁ、設定に関していえば個人的にも非常にめんどくさい! もう過去最大級の面倒くささを誇っているし、好きだったライダー達がどんどんライダーで無くなるであろう展開 を想像し抵抗を覚える人も多いんじゃないか。でも「記憶」に「目的」「継承」といった要素は上手く交通整理してやればバカアツな展開が望めるし、この調子で先輩の活躍をセーブしていけばきっと後に来るであろう共闘の画が大いに盛り上がると思う。ややこしさを感じるとはいえ、ひょいひょい安直なクロスオーバーを見せるよりかはこれくらいの縛りがあるほうが後が楽しみにはなる。まだ、どのようにして本作に平成ライダーのテイストが織り込まれていくのかは全然想像できないけど。


良い面と悪い面、両方備えた諸刃の刃である。


あと、このペースできちんと登場人物らのストーリーを重ねていけば、主人公周りの物語に厚みが出るというのも間違いない。10周年記念作の『仮面ライダーディケイド』はあくまで「過去のライダーを商売のために駆り出していくので主人公たちのストーリーは二の次です!」というのを本編でキャストに代弁させちゃった(「ディケイドに物語はありません」という)シリーズで、その点が非常にキツかったのだけどそういった風にはならなそう。お祭りムードに走り過ぎず、あくまでソウゴを主軸に据えた物語には安心できる(まだ3話の段階ですが…)。


※思えば、アナザーライダーの設定とかも上手ではあるんですよね。ショッカーに改造され悪の手先になりかけた存在、いわば怪人のなりそこないが仮面ライダーであるからして、ライダーのなりそこないが怪人として暴れる展開は逆転の発想として純粋に面白い。
(また、オリジナルキャストを用意できなかった場合でも「この時代のライダーは既にアナザーライダーに存在を上書きされているから、元の変身者は一般の一人にすぎず主人公たちとは絡めないのです」みたいな言い訳で通せそうではあるし…)。

■ ぶっちゃけ、今後の展開は楽しみです


仮面ライダージオウ DXエグゼイドライドウォッチ

仮面ライダージオウ DXエグゼイドライドウォッチ


さて、3話と明日放送の4話で登場するレジェンドライダーは一昨年のエグゼイド
仮面ライダーエグゼイド』はポップでカラフルな見た目に反し、歴代ライダーの中でも主人公がぶっちぎりでヤバイやつという点も含めて評判が高く、個人的にも大好きな作品。本作でも初登場時からただならぬ雰囲気で、話の最後で主人公たちに殴りかかるといった「次回は絶対胸アツな展開くるな!」と推測できるお決まりをかましてTo be continued...となった。01シャツにパラド靴も懐かしく、「大変身!」の声を聴いた時にはちょっと目頭が熱くなった。演じる飯島寛騎君、ほんとに厚い俳優になったなぁと思う次第で。


3話では、結局魔王への道を選ぶこととなった主人公と彼を監視する未来人の二人との同棲コントも繰り広げられた。その演技アンサンブルが現時点でもなかなかに楽しく、ギミックでギチギチな様子が伺える謎めいたキャラクターの存在も今後への興味を駆り立てる。1、2話であやふやだった間やテンポもかなり詰められてだいぶ見やすくなった(複雑な内容よりこっちのが気になってた)ので、キャラの掛け合いにも期待を寄せて観ていきたいですね。

…やっぱどれも上手く料理出来れば傑作に化けそうな素材揃いです!!これからもライダーをライダーたらしめる要素を手繰りながら、中盤から後半にかけての盛り上げと上手いまとめが出来れば結構良い線の異色作として語り継がれると思う。今までの作品では観たこともないような良い画や展開が見受けられるたび、謎の男ウォズのように新たな特撮シーンの誕生を祝っていきたい


めちゃくちゃ小声で言いますが、今回の変身ベルトとても楽しいです。20年間で積み上げた技術の粋って感じ。(おしまい)