アレンとドラン〜本人にとって大事件、誰かにとってのエンタメ

アレンとドラン(1) (KC KISS)

 

こんにちは。アベニティです。

 

先月、待ちに待った漫画の最新刊が出ました。麻生みことの『アレンとドラン』2巻。待ってた…。女性版『モテキ』というべき軽快なサブカル青春譚、本当に楽しみにしていて!

1巻発売より約1年半弱。我ながらちょっと辛抱したなぁ。

 

 

以下あらすじ。

 

大学進学とともに東京に上京した林田(リンダ)は、サブカル映画大好きな文系女子
ある日、文系説教ジジイにおそわれそうなところを隣人・江戸川(エドガー)に助けられる。
それ以来、江戸川に何かと助けられて無事にサブカルを満喫中。
大学3年に進学し、ゼミはメディア文化論に。

全ての文系女子に捧げる、
ぼっち上等文系大学漫画登場!!

 

引用元:https://kisscomic.com/kc/allentodolan/

 

まず一般論から。やっぱり、恋愛は別にしてなくても死なない程度のものであるという認識が世間に通底しているので、それに向かって四苦八苦する姿というのは大体の人の目にかなり滑稽に映る。フィクションならなおさらで、その辺を面白おかしく描いた作品は数多ある。

 

かつ、常に自分の醜いところと向き合って行かなければならないという試練も生じる。作中で主人公が頭を抱えるように、あれこれ思い出しては恥ずかしくなるターンは恋愛初心者にとって必修科目だ。

 

〜それはある種“オタク”、自分の好きなジャンルにうつつを抜かすタイプの人間にとっては割と困難極まりない事件となると思う。今まで他の創作物やキャラクターに気持ちを乗せてきたぶん、フィクションにおけるノウハウや“お決まり”は理解できれど、現実にどう動いたら正解なのかが分からない。

 

“アレドラ”の主人公・リンダにとってもそれは例外ではなく、そもそも根本的に友達の作り方すらよく分かっていないという状況もあった。彼女は苦悩する。

 

ただ、その苦悩や努力が重たく綴られているわけではない。軽妙に映画ネタ等を挟みながら、戯画化されたテンションで読者を笑わせにかかる。この塩梅が絶妙でクセになる。

 

「レオン…♡」「『ブロークバック・マウンテン』…!?」のくだりはすみません、ネタ運び&タイトルのチョイスが流石すぎて拍手です。

 

 

〜〜以下、若干のディープなネタバレを含みますので興味のある方、未読の方はご注意ください〜〜

 

◼︎ズルすぎるパーペキ男子  「エドガー」

 

リンダが想いを寄せるエドガー(大学生でバーテンダー)は料理上手、気配りに長けていながらちょっと変わったタイプのイケメンで、女子のタイプを分類することに興味があるということが本巻で明かされた。

 

理由としては彼の女性経験でのほろ苦い一幕×3があるのだけれど、好きになった身としてはそんなのたまったもんじゃない。ないよな。

 

一読者としても読み進めるうち、エドガーのことをどんどん好きになるようにイベント、演出が重ねられていくためにあ、あたしどうなっちゃうの〜!!が全く他人事と思えなくなる。フィクション、“面白いエンタメ”がちゃんと「一個人の人生の局面」として認識できるシーンに化ける時の描写、巧すぎて胸キュンする。

 

彼と彼女の凸凹ながらテンポのいいやり取り、なかなか小気味よくて面白く。やはりこれは筆者のギャグセンスの賜物と思うところなんだけど前述したようにちゃんとラフなところが心地よく、各キャラクターが「脚本に動かされている」感じがしないのが良い。

 

自然と恋して、バイトして趣味の話しして。この先、物語はどうなっていくのだろうか。ここも上手いなと思うんだけど読み返せば(ギャグの)天丼、パース操作、台詞の応酬をさらっとみせる手管が見事。絵が、とかじゃなくて純粋に漫画が上手い

 

単行本2巻までの期間はだいぶ熟成されていたとはいえ、エドガーの秘密が明かされた以外のパンチが少なかったのはやや残念だった。主人公が所属するゼミのタイラー先生(←この人も好き!)による「分かる…おっさんの気持ちが…」のくだりとか結構笑いましたけど。近づいたり遠のいたりの展開が続くが、どうなる次巻。できたら今度は早めでオナシャス!

 

アレンとドラン(2) (KC KISS)

アレンとドラン(2) (KC KISS)

 

 

(おしまい)