ルパンレンジャーvs.パトレンジャー 衝突する正義と目的!
今年の戦隊ヒーローもの、『快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー』はチャレンジングかつ抜群の安定感を誇る内容で驚かされた。あまりにクオリティーが高い作劇に、メインライターの過去作を追いたくなるほど。でも私自身、戦隊ものはそんなに観てきていないのでいつも以上にフワッとした雑感で行きます。
最近では、新聞のコラムで三谷幸喜氏が取り上げたことでも話題になっていましたね。
以下、現在放送分の34話まで観た雑感です。
◼︎あらすじ〜センセーショナルな対立構造 革新の脚本
怪人に大切な人を奪われ、それぞれが失った人を取り戻すことと引き換えに秘宝・ルパンコレクションを全て揃えることを謎の執事・コグレと約束した快盗戦隊ルパンレンジャー。
巷を賑わす彼らに加え、社会の表裏で大犯罪を働く怪人の一団を追うためにルパンレンジャーと似た構造の武器を手に戦う、国際警察改め警察戦隊パトレンジャー。
彼らが衝突する内容と聞けば、この手の特撮を少しでも知る人であれば「何話かですぐお互いが仲良くなって一つの戦隊をやるやつでしょ?知ってる知ってる」と勘繰ってしまうような設定ではある。
だが、これが視聴者の想像の斜め上を行く展開で面白かった。現在3クール程度だが、いまだに両戦隊が散らす火花の勢いが衰えないのだ。まるでそれぞれ別の番組からやってきたような2つ(敵も加えれば現在3つ)の勢力が毎週のように激突し、時に背中合わせで共通の敵を倒すという展開が止まらない。
彼らの互いの正体の認知についても、「職業として公認されているゆえにパトレンジャーの正体はルパンレンジャーに知られているが、パトレンジャー側はルパンレンジャーの画策で彼らの正体に気づけていない」という半仮面劇が続いている。ストーリー上ちょっと苦しい場面もあれど、ここまで熱い関係性が保たれ続けているのが流石という他ない。
この作品の温度を語る上で説明不可欠なのは、両戦隊のリーダーの存在だ。
それぞれの目的意識が全く別のところにある、信念を曲げない2人の男〜彼らが対峙し、目的や立場の違いから生じる高い熱を帯びた対人アクションや、呉越同舟的な共闘の図が極めて面白い。
失った兄の面影が垣間見えたり、その他諸々の理由で警察を遠ざけてしまうルパンレッド/夜野 魁利(伊藤 あさひ)と、あくまで堅い信念から怪盗とは馴れ合わないパトレン1号/朝加圭一郎(結木 滉星)。この二人が武器を向け合うだけでいくらでもご飯が食べられる感じ。このレッドvs.レッドの構図でガンガン盛り上げられた話も数多あった(劇場版とかもその典型だったし)。
登場人物みんな面白いキャラ付けで大好きだけど、個人的な推しメンはやっぱ上記の熱き熱血漢、パトレン1号とパトレン3号/明神つかさ(奥山 かずさ)ですかね。3号はクールビューティーな見た目・圭一郎とは違う落ち着いた芯の強さが彼女の魅力になっていて、画面にいるだけで安心を覚えるキャラクター。演ずる奥山はスタイルのよさから早くも青年誌のグラビアに顔を出したりしていて、この点からも今後の活躍が楽しみになってくる。筆者は彼女が表紙になっている号を購入させていただきました。読んだけどそりゃあもうめちゃめちゃきれいd(割愛)。
◼︎柔軟でクールな追加戦士
そして20話にして追加戦士、エックス/高尾ノエル(元木 聖也)というのが登場したのだけど、これがまたトリッキーなキャラクターで面白かった。正に追加戦士史に残る自由な存在感が出色。
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国際警察に所属しながら、潜入捜査のような体で怪盗側にも協力するエックス(彼は怪盗の正体を警察に明かさないなどしているためにそのウエイトが明らかに怪盗側に傾いているのが分かる)。変身後の姿もルパレンとパトレンの二種類が存在していて豪華。
エックス自体のキャラ深掘りは為されない(ゆえに人間であるかどうかも定かではない)ながらも、彼の心情が真摯に明かされる局面が結構な数で用意され、また両戦隊に対し有効に機能して見せるために視聴者も謎の信頼感を覚えてしまうというのがずるい。元のポジションの美味しさもそうだが、役者の落ち着いた優男っぷりも相まって最近ではなかなか良いキャラに仕上がりつつある。これからも彼の隠された思惑やその正体に注目していきたい。
前述のとおり筆者自身、(本来仮面ライダーより戦隊ヒーローものに親しんで来た身ながら)最初から最後まできちんと追いかけていた戦隊作品はそんなにない。ゆえにあまり他作との比較が出来ないので何を言ってもちょっと小声になるところ。強いて言うならギンガマン『星獣戦隊ギンガマン』(1998~1999年)と『動物戦隊ジュウオウジャー』(2017~2018年)くらいで。ゴーバスターズ、ゴーカイジャーあたりもとても好きですけどね。
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◼︎整然としたドライブ感、毎回の密度たるや
特撮ファンから評価の高い人気作『海賊戦隊ゴーカイジャー』『仮面ライダーW』あたりは後追いで観た身ながら毎回ストーリーの密度・キャラクターのポテンシャルを引き出す構成がめちゃくちゃ面白く、主な視聴対象である幼児とか「放送日待てなくて鬱になったりしなかったかな…」とかマジで考えてしまうくらいだった。ルパパトも、現時点で既にそういう部類にカウントされていく名作だと思える。
ただ、今作に関して言えばちょっと諸々の要素が整いすぎているというか、脚本の纏まりがちょっと異常なまでに重視されているせいか遊びの部分が弱いなあ…とも感じるところ。
怪人以外の犯罪者が一堂に会する話とか、人間を一気に老化させてしまう怪人とかいう面白ギミックを仕込んでも、ストーリーで本来やろうとしていた本筋(メインキャラクターの家族の話とか)が重視されるためにあまり印象に残る回が少なく、若干の食い足りなさがある。迷回だった27話『言いなりダンシング』のような、キャラを弄ってその反応を見せるためのネタ回とかもうちょっとあって良いと思うのだが…。その方が各キャラクターへの愛着も高まるし。
実際はその27話も、個人的には展開上の事態収拾速度や各役者のリアクション演技が物足りなく、肝心のギャグシーンもそこまで笑えなかったのが残念であった(ロボ戦での一幕は爆笑したけど)。まあ、あくまで強いて言うならのレベルなんですが。
今後この戦隊のバトルがどのような決着を迎えるのか、また登場人物の全員が無事に目的を遂げられるのか…???毎週日曜日に固唾を飲んで見守りたい。(おわり)