『ジュラシック・ワールド 炎の王国』 2018年、満を持して生まれ変わる世界

こんばんは。アベニティです。もうバリバリ秋になってしまいましたね。

 

今年、平成最後の夏の思い出と言えば正に学芸員実習まっさかりであって全然遊べた記憶がないのだけれど、合間を縫って映画館へ足を運んだのは良い思い出のうちにカウントされている。そんな状況で観たジュラシック・ワールド 炎の王国はなかなか強く印象に残った。

 

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出典:https://eiga.com/movie/86390/

 

 

 

 

 

前作、大いに楽しんだものの恐竜の扱いに微妙に引っかかった点が若干あってちょっと煮え切らない思いをしたが、こっちには大満足今後の新しい展開を感じさせる意欲作に仕上がっていたように思うし、個人的なツボにぐっとハマる良い出来の娯楽作になっていた。Filmarksに記録した際に付けた星の数は4.3。

 

■シリーズでは異色? 二部構成


今作はまず舞台設定に監督の本領炸裂をみる。一躍(格調高めな)泣きのホラー永遠のこどもたち(2007年、ギレルモ・デル・トロ製作総指揮)で名を馳せた監督らしく、前半はファミリー向けかつ上品なディザスター、後半は洋館が舞台のゴシックホラーとそれぞれで画の冴えが光っていた。

 

二度目の絶滅の危機から恐竜を救おう!と(半分偽りの)号令で集まったオーウェン一行の冒険。これ自体は至って楽しいんだけど、島に取り残された恐竜のシルエットが徐々に噴煙の中で薄らいでいく描写、姿ははっきり見えずともその鳴き声だけが延々に響き続けるシーンが苦しくて泣く。

冒頭、みんなのモサさんモササウルス)がぬっと出る感じとかもGood。パークの主・ティラノサウルスによるシマ荒らし連中に対するシバキ上げもちゃんと怖くていきなり期待できましたし、何より白眉は後半の地獄の洋館鬼ごっこ。

 

やっていることは一作目の『ジュラシック・パーク』(スティーブン・スピルバーグ監督、1993年)の厨房でのラプトルかくれんぼのシークエンスに近い。ただ今回、迫りくる個体から醸される雰囲気から言って正に悪魔みたいなのがやってくる様には、ホラーに慣れた身ながらちょっと戦慄を覚えました。肌身にゾクゾク来る画的な楽しさという点でも充実をみせた一作だったと思う。

 

■ 前作との違い 恐竜の”生身”感

 

加えて恐竜の唾液が登場人物にびちゃびちゃと降りかかったり、血液をどうこうする描写(ジュラシック・パークシリーズといえばこれですよね!)がきちっとしていたので、それらのシーンが画面で繰り広げられた時点で既に結構な満足感はあった。

 

やっぱり前作で何が不満だったのかって、あまりに人物と恐竜が接触しないためにスクリーン・プロセス(「スクリーン前の俳優演技」と「スクリーンの裏側から別に撮影した映像」を同時に撮影する技法)で撮影したかのような感じに見えてしまって乗り切れなかったのだ。本作ではクズの雇われ傭兵さんがレーティングギリギリでちゃんと酷い目に遭ったりしており、そこでも少し感動。そう、これが観たくてジュラシックパークに行くんです私たち !

 

分厚い表皮に集う羽虫まで描いた点も好ましい。モンスターではなく、あくまで一生命として見せる演出が物語の芯を強くしていたなと。対して、恒例となったオリジナル恐竜の異形感、悲劇性が大いに引き立っていたのも忘れがたい。

 

■悲劇のハンター、インドラプトル

 

『炎の王国』に於けるオリジナル恐竜のインドラプトル、これは前作でモササウルスに食われて死んだ最強のバイオ恐竜・インドミナスレックスの量産型である。

 

ジュラシック・ワールド インドラプトル FVW27

ジュラシック・ワールド インドラプトル FVW27

 

 

して、こいつのルックがまずナイス。馬っぽいサイズ感で前肢がラプトル系の恐竜より妙に長かったり、鱗もあちこち剥げていたりして「強い!」「怖い!」より「かわいそう…」が先にくるバランスが巧み。正に人のために元ある形を捻じ曲げられたというのがひしひしと伝わる、分かり易いシャープさとは違う巧みな造形性。

 

誰かに指摘されて気づいたけど、このラプトルが文字通り旋階段を破壊して(DNA構造を破壊して)迫ってくるという描写はベタながらクール。

 
本来、ジュラシックパークシリーズと言えば「テクノロジーと自らの欲に溺れた人間がしっかりツケを払わされる作品」であった。本作では露骨にそのパートが取り沙汰されており、我儘を尽くしてきた人類達へのハイテンポなしっぺ返し・大災害に至るようのな事態がバキバキな決めカットと共に演出されていてカッコいい。

 

終盤もまた、辛い展開が待つ。シアンガスで死を待つ恐竜達。恐竜の生死についての裁量が、再び人の手に委ねられる瞬間が来るのだーーー人間側が下した答えは、「恐竜は滅ぶべき存在」というものだった。

 

しかし、とある特殊な境遇で生まれた少女・メイジーの判断により、彼らは滅亡の運命から逃れることとなる。彼女は旧ジュラシック・パークを建造したジョン・ハモンド旧友ロックウッドの孫娘として伝えられていたが、実は彼が死んだ実娘を悼んで創り出したクローンだったのだ。彼女は自らの境遇を理解し、自身と恐竜たちを重ね合わせて「生きている生命」は見捨てられないと彼らを解放。夜の闇に、古代生物たちは解き放たれた。

 

ここに新しい時代が到来した。現代社会に出でた恐竜に、人類が怯えながら暮らす時代が !

 

■堕ちた王国、新時代を告げる咆哮

 

ジュラシックパークから人間の世界へと連れられ、かくあって野に放たれた恐竜達は 様々な場所を我が物顔で闊歩し始める。みんなも好きだろうけど、新旧の百獣の王が咆哮を連ねるキメカットとかちょっと涙が出そうになりました。中盤ヘリ移動の途中から何となく展開は察せてしまったけど、それでもネタバレを避け続けたかいはあったなぁ…としみじみ。

 

まぁ、この場面ではややちょっと「各種につきその個体数じゃ繁殖も難しいんでないの…??」とか思ったけど、このシリーズでは恐竜=最強生物と定義づけられている(笑)ためにまぁ大丈夫っしょ!との気持ちが勝った。

 

シリーズでは一作目に次いで好きです。今後の展開としては猿の惑星』プリクエルみたいなポストアポカリプスものになっていったら凄く好みなのだけど、そしたらパークの名残すら無くなっちゃうよな。いや、でも…。ファンのジレンマである。

 

(おしまい)