ジェーン・ドゥの解剖 死体の美女に気をつけろ!!新感覚ホラー

Netflixに!

 

巷を震撼させた!!

 

 

遺体解剖ホラーが!!!

 

ジェーン・ドウの解剖(字幕版)

 


はい、画像で既にちょっと怖いのやばいですね。

 

一説によると、怖いものを見てハラハラするのとエッチな気分になってドキドキするのは根っこが同じ類の感情らしいので、ホラー好きは大概助平だという話もあるらしいんですがどうでしょう。まあそれは置いておいて。

 

■解剖映画、かくかくしかじか

 

ホラーじゃないですけど、医大生の主人公が恋人の解剖によって過去の記憶と妄想世界に溺れていくと言った内容の映画、塚本晋也監督の『ヴィタール』(2004年)なんてのもありました。

 

 

生きたまま解剖されるという内容のスリラー『アナトミー』(シュテファン・ルツォヴィツキー監督、2000年)は設定からしてすごく怖かったな…。これはあまりに痛そうで観れていないですけど。

 

 

得物としてチェーンソーやショットガンでなく、医療道具を持ち出してくるあたりに悪趣味を感じて怖気が走る。でもそれくらいのギリギリっぷり、面白そう!と少し食指が動くところではあるのでいつかは観るかもね。

 

怖いよりもグロい!倫理的にヤバい!が先に来ちゃって、しばらくお肉は食べなくてよくなる映画『マーターズ』(パスカル・ロジェ監督、2008年)も解剖映画の域かしら。

 

 

■監督は『トロールハンター』のひと!!!

 

さて本題の『ジェーン・ドゥの解剖』、早速観て参りま〜〜す。

 

あらすじはこちら。

 

ある一家が惨殺された家の地下に埋められていた裸の美女“ジェーン・ドウ”の死体。彼女の検死を行うことになった、検死官・トミー(ブライアン・コックス)と息子のオースティン(エミール・ハーシュ) がメスを入れる度に、その死体に隠された“戦慄の事実”が判明し、次々に怪奇現象が発生する。外では嵐が吹き荒れる中、遺体安置所という閉ざされた空間で、逃げ場のない恐怖がはじまろうとしていた……。

 

出典:http://janedoe.jp/sp/

 

※“ジェーン・ドゥ”とは、裁判文書などで用いる身元不明な女性の仮名を指します。

 

監督であるアンドレ・ウーヴレダは『トロールハンター』(2010年)の人なんですね。この作品も大好きだった。POVの映像を重ねて、トロールハンターであるおっさんの日常を追ったモキュメンタリー。トロールは基本紫外線に弱いという設定があるんですけど、それを生かしたバトル、必殺技のごとく光線をかましトロールゆっくり背を向けて歩き出すハンターの画が最高だったりして。トロールの生態をクソ真面目に綴った、どこかのほほんとした内容も◎。

 

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さて、ジェーン・ドゥ…。

冒頭、死体を前にした検死官親子の会話「誰も迎えに来ない、この人は孤独だから死んだんだ」「頭を打ったからだよ」

この粋な会話が聴けた時点で、もう期待ができるなと思った。傑作SF『第五惑星』ウォルフガング・ペーターゼン監督、1985年)の始まりもそんな風だった気がする。話の脈絡の無いところで、キャラクターの性質を示すセリフが聞けると物語に信頼が出来るというか。

 

 

〜以下、若干のネタバレを含みますので未鑑賞の方はご注意ください。〜

 

■ジェーン・ドゥ 悲劇の死体がもたらす惨劇

 

彼女の死体は舌が切断されていた。両手両足の骨を複雑骨折していた。膣内にも裂傷が見受けられ、まず彼らは人身売買による「性的虐待死」の線で死因を仮定。

 

どんどん不穏さを増して行く空気感。

 

 彼らが死体にメスを入れると、内臓には塞がった外傷が見受けられた。さらに肺は焼けて真っ黒、どうしたらこのような死体が出来上がるのか…?と疑問は募る。

 

体内から出てくるのは、麻酔用に使われる植物、魔法陣のようなものが描かれた布に包まれた歯、そして皮膚の内側にも陣の刺青のようなものが確認される。これは何かの儀式が行われた証拠なのだろうか…?

 

そして、不可解な出来事が多発。

 

ラジオから奇妙な歌が流れ始め、

 

作業を中断した時に、配管の中から主人公達が飼っていた猫が無残な姿で発見され

 

電気が消え、安置室に置かれた他の死体が歩き出した。彼ら二人を襲わんと迫る屍。

 

手術中に誤って手首を怪我してしまった父親にも異変が発生する。彼女の身体に見られた刺青模様と同じようなものが腹部に浮き始めたのだ。

 

そして

 

災いをもたらす死体の正体は

 

1693年のニューイングランドでの惨劇、魔女狩りの拷問で殺されてしまった、罪なきひとりの女性だったということが判明。彼女はその壮絶な苦しみを誰かに分け与えんと、ほぼ死したままの状態で長い期間この世界に存在したのだ。

 

その真実に主人公たちがたどり着いた頃には、もう全てが遅く…。

 

■遺体安置室の中 謎が謎を呼ぶ展開の妙

 

伏線ないし前振り、画作り、冷えた空気感の演出と簡潔に描かれた人間関係。その全ての手際が良い。淡々と綴られる物語と抑えの演出。臓器のブニブニのリアリティ。本物を生で見たことが無い身だが、異物を取り出すときにちょっとくっついてくる肉感の精巧さにギョッとした。解剖の映像、本物の役者と特殊造形を織り交ぜて作る違和感の無さにも驚いた。

 

地味ではあるが、至って手堅い良作にまとまっていたと思います。

 

近作で近いものを挙げるなら『10クローバーフィールド・レーン』(ダン・トラクテンバーグ監督、2016年)だろうか。密室における事態の変遷、徐々に明らかになるクソヤバな状況。作品のシーンを包む照明、カラーの感じから言っても似ていた気がするね。

 

 

ぶっちゃけ怖がれたかどうかといえばちょっと ジェーンドゥの正体が気になり過ぎて、作業を停滞させる諸々の怪奇現象を見た時に「ちょ、そういうの良いから!!!」というツッコミが出てしまう程ホラーどころではなかった(笑)。まぁ抑えの演出についても、ちょっと抑え過ぎかな?見せなすぎかな?と思ったりもして。

 

ただ、海外の近作のホラーは単にでっかい音で驚かすのではなく、「今そこに何かがいた…いない!!」という神出鬼没のドッキリで迫りくるので凄い。本作もその手腕には背筋が凍るところでした。

 

(おしまい)