仮面ライダージオウ 5〜6話の新しい試み、目指したのはディケイドプロットの再構成?

こんばんは。アベニティです。

 

前も書きましたが今の仮面ライダーしょっぱなからぶっ飛ばしていて楽しいですね!6話ではついにサブライダーが仮面ライダーファイズの力をGET(この経緯での力の譲渡を見たのは初めて)、華々しい戦闘を披露した。

 

仮面ライダージオウ DXファイズライドウォッチ

仮面ライダージオウ DXファイズライドウォッチ

 

 

2号ライダーのゲイツを演じる押田岳君、最初はちょっとパワー不足のアテレコに不安を覚えたりしてたけど、最近は結構早い上達を見せていて。今回は生身アクションも決まっていて非常に素晴らしかった。正に「2号であり、実質的な1号ライダー」の歴戦の勇者的な趣きで。

 

本人自体努力家らしいというのは(TTFCの補完計画まで含めた)演技の質からなんとなく分かるのだけれど、加えて若干のノリノリ具合も作品に良いスパイスを与えているなと思う。当作品自体も、どうかこのテンションを維持してほしいところです。

 

 

褒めるべき点は彼以外にもたくさんあるのだが、この作品に至るまでに『仮面ライダーディケイド』(2009年)という作品が存在していたことは蔑ろにできないことと思う。

 

 

仮面ライダーディケイド!!怪作にして問題作、モニュメンタルな事件

 

仮面ライダーディケイド Blu-ray BOX

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仮面ライダーディケイド』(2009年)は、今思い返しても実にファン泣かせの代物だった。

 

リ・イマジネーションなる作劇に、道具として利用され続ける過去作のヒーローたち。おっさんの懐古趣味風に突貫的な工事が重ねられていく物語と、ただ訳もなく方々から駆り出されてくるダークライダー(敵キャラクター)。そしててんやわんやになった物語はどこに向かうかとぼんやり見ていれば「続きは劇場版で!」と映画の予告に切り替わる。

 

後追いで観た身ながらも、沸沸とこみ上げる怒りに苛まれる展開が少なくなくて参った。当時を知らない私は放送時の様子を想像する他ないが、製作陣が立ち直れないくらいに荒れてもおかしくなかったのでは、とそう思った。

 

だが、その中には物語の分解、再構築というかなり誠実なアプローチで作られた話も存在したのは確かだ。個人的にちょっと好きなのは『ファイズ学園』と『ブレイド食堂』の話。

 

それぞれで全く異なる舞台、役者を用意しながらも、各作原典に存在した諸々の関係性をそこにパズルのように組み込んでいくやり口には脚本家のセンスを感じたところだった。

 

また、「もしあの壮絶な設定や能力を背負った人間が、それぞれの主人公達じゃなかったら…??」というifを見せてくれた回があったのも事実。実はその点で個人的にアギト編とかちょっと評価していたりもします(多少の詰め込み過ぎ感はあったけど)。隠しコマンドを拾って別の分岐でストーリーを進めるような軽快さにワクワクした。

 

 

前回と今回は、

そういった再構築が二つの物語の分解と合体という体でなされており、実に充実度の高い内容に仕上がっていたと思う。それも『仮面ライダーファイズ』(2003年)と『仮面ライダーフォーゼ』(2011〜2012年)という、一見相反する性質をもつ二作を使用しているから唸らされる。

 

■ジオウ5〜6話の妙   両作の味の抽出が成功した作劇

 

結果として、話の方向性的にはそれぞれの折衷と言うよりかはきっちり5話はフォーゼ側、6話はファイズにと、各話で双方にとことん比重が傾くことになったなぁと。

 

団結することと他人からの信頼が得られていること、周囲と“ダチ”であることこそが勝利の条件だというストーリー運びは正しく『フォーゼ』のものだし、死んだ人間がまた生を得ると言った図、願いのために強大な力を行使するための是非を問う展開、その先に待ち受ける哀しき終着…という点では『ファイズ』もとい平成一期のテイストを感じさせた。

 

特に6話のファイズ編、前述したように「乾と草加の二人がライダーでなく、オルフェノクすら出ないのにちゃんとファイズ世界のカラーが再現できていた」という点で秀逸であった。

 

また、この2話は共に「仲間」が重要なポイントである回だった。ソウゴとゲイツ、乾と草加。彼らの複雑な関係がある一点でシンクロを見せた時、物語はこの上なく過熱する。どちらも相手の深い事情を飲み込むのが主人公側で、それを踏まえてギリギリのところで「仲間」の関係に至る。最後には乾の元から立ち去った(今度は死ななかった)草加だが、ゲイツとジオウの2人はどんな運命を辿っていくのだろう…ということを思わず考えずにはいられない。

 

正直、レジェンドと呼ばれる先輩格が出てこようがちゃんと後輩であるジオウに信念や教えを授ける展開にならない(設定上そういう話が作れない)のは非常に残念なところだし、主人公が王になるとぶっ飛び発言を口にした際にそれぞれ先輩が良いリアクションをしてくれない点にも少し閉口する。

 

が、これも何かの伏線なのでは…?と思わせてくれるほどの完成度が続いている。とりあえず話の全容が見えてくるまでは黙って観ていようと思う。

 

■毎年のライダー交代劇、タイムジャッカーの関係性

 

つい先程、ツイッター上で当作品のプロデューサー、白倉伸一郎が作品の核心的な部分について言質を取られたスクリーンショットを目にした。

 

 

これが本当なら、なんともメタかつスマートな自己言及がなされた作品なんだ!!という言い方ができる。まあその後にツイ主が述べるように、割とちゃんとバトンタッチがなされている作品、みんな存在しているクロスオーバーはどうなるんやと聞けばそこは「まあパラレルの範囲内だと思って〜」と逃げられてしまいそうな小声っぷりなのが気になるところだけど。

 

■王は何を目指すのか〜業を背負い続ける覚悟の源は

 

王を目指すというソウゴはこれからも各ライダーが抱えた、他戦士の力まで奪って振りかざす断罪の責任を負いながら人助けを続けるのだろう。今回はビターな後味が残る結末が印象深かったが、この“人助け”は彼の前途にどんな影を落としていくのだろうか。

 

これから物語はどうなって行くのか…なぜ、ソウゴはそこまで王のメンタルでいられるのか。現状一切触れられていない彼の過去についても気になるところだ。

 

無粋な話をすれば、噂ではもうじきあの人気ライダーと、あろうことか例のサブライダーの合体回が見られるそうで。そんなの、本当だったら超〜楽しみにするしかないじゃないか…!本作が時間旅行物の基本を押さえてないとか、時間操作による歴史書き換えに矛盾があるとかの指摘はもう知らん。玩具買って最大限に応援するから、連続で日曜日が来てほしい。

 

(完)