Buzyの鯨〜作詞・作曲、歌唱、イメージコンセプトに恵まれた一曲

 

鯨

 

久々に聴きたくなった一曲。Buzy『鯨』(2004年)。

ジャケットみる度ちょっと懐かしいわ! あの頃私は小学〇年生だったっけ。

 

何となく好きで、たまに聴きたくなる周期が来た時に楽曲を再生している。聴けば満足。聴く度に満足。個人的な話をすればウォークマン内のプレイリストにして36曲目、桑田佳祐『100万年の幸せ!!』(2012年)の次曲というところに位置している(これはちょっとどうでもいいですね)。 

 

作詞はポルノグラフィティ新藤晴一、作曲(編曲)は本間昭光。歌い手はBuzy。またこの曲はTVアニメふたつのスピカ(2003年)のタイアップでもあった。

 

本間昭光氏は長くポルノグラフィティとタッグを組まれている音楽プロデューサーにしてミュージシャン。槇原敬之広瀬香美らの作品の編曲をされていることでも広く知られているみたいですね。最近では花より男子のミュージカル(2016年)の音楽を手がけられていたことも記憶に新しい。

 

 

さっきこの曲を聴き直したのだが、やっぱ完成度の高さが凄い。

 

リズム良く胸に刺さる重たいサウンド、ちょっと歪みを見せるギターの旋律。

 

歌詞はポルノでいう『アゲハ蝶』(2001年)今宵、月が見えずとも(2008年)の系譜の失恋歌である。「“あなた”を愛してしまったが故に起こった悲劇と孤独」、「今は見えない“あなた”を想う」というテーマがアニメ『ふたつのスピカ』のイメージの引用と共に綴られている。

 

本来はこういった曲がハルイチ氏に歌われると、若干のメンヘラ的な粘度を感じる様式美に聴きながら歌詞を追おうとする脳が思考を停止してしまうのだが、第三者に歌われる曲、それも女性アーティストの口によって奏でられるものと意識し作られたせいか、とても歌詞の美しさが際立っていた。

 

生まれ落ちた罪   生き残る罰

私という存在

一瞬のトキメキ   永遠のサヨナラ

いつかは許して下さい

 

止める言葉も聞かずに

陸に上がってしまった

鯨の物語    風が覚えてた

新しい世界へと胸躍らせたのでしょう

口笛を吹きたい気分だったのでしょう

 

出典:Buzy『鯨』(2004年)

 

鯨が絶望して   捨てていった  

この場所で

私は生きている   やりきれなくなるわ

 

出典:Buzy『鯨』(2004年)

 

覚えておいてね   私のことを

遠い空まで届くの

愛した真実   失くした事実

ささやかなる落日

 

出典:Buzy『鯨』(2004年)

 

↑ここなんかは押韻が気持ちいいです。二段目と三段目の引用部分には顕著だったのですが、鯨とは客観視した過去の自分とかつて恋愛関係にあった相手のことと断定できる。失恋の情景を歌いながら聴者を太古の世界のイメージへと誘い、どこか壮大なテーマを感じさせるのがうまいなあと。「誤った進化」と「一瞬のキラメキ   永遠の空白」=青春時代のエトセトラを見事に合致させた題材の勝利でもあると思います。

 

再生する度、張りある声でのまっすぐなボーカルが強く胸を打つ。一本調子ながらも歌い上げる時の音の確かさが聴く側の感性を猛烈に刺激して、曲中で歌われている“鯨”についての想像を掻き立てられる。

 

Buzyは2006年に解散してしまったが、未だBuzyと検索するとトップに表示されるのがこのデビューシングル『鯨』の画像である。この曲はこれ以降も、ある種彼女たちの固定されたイメージとして残り続けるのだろう。

 

鯨

 

(おしまい)