『カムヤライド』運命の三男児!!久正人の新作ヒーローもの

漫画家・久正人の最新刊が出ました。その名も『カムヤライド』。書店でたまたま見つけて購入。久々にグッと来そうな久漫画、ちょっとわくわくしながら読んだ。

カムヤライド 1 (乱コミックス)

 

 

■筆者も大好きな『エリア51』のテイスト

久正人は前々作エリア51(新潮社、2011〜2017年)で神話・映画・特撮と様々なテイストをデザインチックに織り込んだSFアクションを連載していた。

アメリカの51番目の州エリア51には、モンスター、神、UMAなど世界中の異形が集められ隔離されている〜という設定の元で、作者がさまざまなキャラクターを登場させ趣味性を披露していくという超絶楽しい一作であった。

元来の映画オタクとして、最初はそれらの小ネタに惹かれて単行本を揃えていた。映画オマージュ、ちょっとマニアックなところだと『GONIN』石井隆監督、1995年)のものとかもあったりして。往年の邦・洋画俳優ネタがひしめく一作であり、読み進めれば主人公のハードボイルドドラマとしての完成度が非常に高くて驚かされた。座頭市三隅 研次監督、1962年)の勝新太郎を模したキャラクターはジャンプ漫画等でも見るが、同時に本作ではそれに加えてデスペラードロバート・ロドリゲス監督、1995年)からの引用をも感じさせるキャラクターとして登場しており、本当にカルチャーのごった煮感が面白い。

バキバキに陰影が決まったクールかつユーモラスなデザイン、特撮由来のちょっとボンクラな造形が大発揮された一作でもある。怪獣的なルックに落とし込まれた古今東西の神々の姿は言わずもがな、エジプト神話回でのメカニカルなスフィンクスのビジュアル、魑魅魍魎らのディティールをありとあらゆる凝った角度から見せる構図…なんて今まで漫画を読みながら感じたことないレベルのエポックな香りにクラクラした程だ。

 

エリア51 1巻 (バンチコミックス)

エリア51 1巻 (バンチコミックス)

 

 

また、氏が宇宙戦隊キュウレンジャーでキャラクターや宇宙船のデザイン、コンセプトアートを担当していたのも記憶に新しい。これも明るく楽しい子供向けな作品に合わせてのキュートな曲線やカラフルさが作品にマッチしていてさすが!と思ったが、時に異星人、人外キャラクターの造形となるとちょっとした艶っぽさがそこに滲んでいたりしてさすがだった。イカーゲン&マーダッコ大好きです。

 

 

この作品に関しては、まぁもっと話が面白ければな…とかいろいろ思うとこがあるけども。久正人の「戦隊ヒーロー物としてのデザイン」は忠実に汲みながらも自作の味を盛り込んでいく作家精神がすこぶる良かった。巨大なボンクラカルチャーの引き出しからいいところを抽出してリデザインしていく手際の良さに惚れ込んだファンも多かったと思う。

 

■久先生、今回挑むは“日本最古のヒーロー譚!!”

はてさて今度はどんな作品が…?と思っていたらタイトルからまんま仮面ライダーでびっくりしたという。以下あらすじです。

天孫降臨から200年。強大な力を持つ国津神(土着神)のもと、
有力な豪族たちがそれぞれの領地を治めていた時代を経て、
国津神を封印したヤマト族の王が列島を統べる古墳時代
内乱の時代も終わり、日本中に平和が訪れていたのだが……。

 封印されていた国津神を覚醒させる謎の人物によって、
日本各地に叛乱の火種が撒き散らされていた。

 熊襲で起きた叛乱の首謀者・カワカミタケルは、
覚醒した熊襲国津神に、人知を超えた力を与えられた怪人であった。

 オウスの皇子(後のヤマトタケル)が率いるヤマトの叛乱鎮圧軍は、
カワカミタケルの前に全滅しかけるが、オウスが安芸の地で出会った
埴輪売りの露天商・モンコが現れ、状況は一変。

 モンコは埴輪を媒体にして、国津神の強大な力に唯一対抗することができる
カムヤライドへと変身したのであった。

古代、巨神、異形の民、ヤマト朝廷ーー
日本最古の変身ヒーロー・ファンタジー!!

引用:

https://www.leed.co.jp/9784845851799

物語の冒頭でたまたま居合わせた男連中が、実は怪人とヒーローなりえる存在で、おそらくこの先に幾度か鉢合わせていくうちにライバルとしての関係を練っていくものだと思われる。

ヒーローが怪人・怪獣と対峙した時の横スクロールっぽい画面も特徴的。今後ストーリーが進むごとに廃されてしまう演出かもしれないが、格闘ゲームと古代から伝わる壁画・絵巻物の意外な構図的共通点に驚かされたりして少し新鮮だった。

そして女性の性的消費反対!の過激派意見が横行し侃侃諤諤の意見が交わされる昨今「なーにが女性の性的消費!だったらワシは美青年の性的消費じゃ!!!!」と言わんばかりに男が捕らえられ、あられもないセクシーをさらす触手プレイ(未遂)が描かれていたり、ガチムチの怪人男が主人公に「俺は男でもイケる」発言しながら迫ってきたり、近頃噂の英雄に憧れて頬を染める男児の姿があったりと今にも80ってきそうな展開が目白押しな内容で。笑けるくらいには柔軟な性描写・久政人節が全開である。

 

■どう化ける?久作品の展開やいかに

古墳ミステリーサークルのような宇宙人要素が見出され、そこを切り口に発想された作品のよう(これはあくまで憶測ですが)なので、このままコアな侵略型SFのように展開しても本作は面白い。

仮面ライダーシリーズを手掛けたプロデューサー、関係者、著名人のファンの「平成ライダーについて」のインタビューが纏められた『語ろう!クウガ・アギト・龍騎(株式会社カンゼン、2013年)の武富健治インタビューにて、彼が小学生の頃からプロットを温め続けていた変身ヒーローもの『古代戦士ハニワット』(第1話が自費出版され、2012年には企画展で1/6自作フィギュアが展示)という作品の存在が明かされていた。

 

語ろう!クウガ・アギト・龍騎 【永遠の平成仮面ライダーシリーズ】

語ろう!クウガ・アギト・龍騎 【永遠の平成仮面ライダーシリーズ】

 

 

この本によれば武富の代表作鈴木先生双葉社、2005〜2011年)の連載がある程度真ん中を越えてきた時期、彼は次作として『古代戦士ハニワット』を描く準備をしていたという。しかしその内容が、クウガ』『アギト』『響鬼の3つを合わせたようなものだったとあとで気づいて引っ込めたという話がある。武富の談からするとこれは現代劇であるようなので、この漫画のオリジンに位置するような作品が『カムヤライド』なのかなぁなどと思ったり。ぶっちゃけハニワでヒーローという点が両作に通じているので、久が『ハニワット』から何がしかのヒントを受けているかも…と考えるとちょっと面白い。

物語はまだ一巻であり、1シリーズにつき50話程度の特撮もので言えば1〜4話くらいかけてキャラクターや環境の説明が綴られている段階だ。初巻にいたヴィランはまだ実力的には弱い部類で、展開が進むごとに格が上がっていって、いつかは幹部格のようなキャラクターが物語の根幹を揺るがすような事実を口にしたり…というのがあるかもしれない。そうなれば平成仮面ライダーイズムの継承だ(平成ライダー作品にはシリーズ構成が存在しないので、このような積み重ね型の展開が生じることも少なくない)。

 

作中に撒かれた関係性がどこのように回収されていくかは神(作者)のみぞ知る…と言ったところだ。日本最古のヒーローがどう活写されていくかは大いに見ものである。

 

(完)