星野源 走り続ける洒落な男の『アイデア』

星野源『アイデア

アイデア

一度ダウンロードしてからしばらくぶりに楽曲を再生。初めて耳にした時はピンと来なかったけど、これは稀に見る(聴く)軽快な傑作だと思った

 

以下は2か月前の記事だが、読めば物凄いヒットであったことが分かる。もう知ってるって方は読み飛ばしてどうぞ。

 

配信開始と同時に各配信サイトのリアルタイムチャートの1位を独走し、8月20日オリコンのデイリーデジタルシングル(単曲)ランキングでは、史上最高のダウンロード売上数を記録。

iTunes週間ソングランキングをはじめ、レコチョク、mora、mu-mo、music.jpなど各主要配信サイトでもウィークリーランキング1位を獲得するなど、大きな反響となっている同曲だが、本日8月29日発表されたBillboard JAPAN HOT100において配信限定リリースでありながら総合首位を獲得。さらに、同日発表されたオリコン週間デジタルシングルランキングにおいても1位を獲得。配信限定リリース作品として、史上初の主要ランキング2冠を達成した。

Billboard JAPAN HOT100とは、パッケージ売上枚数、国内主要音楽ダウンロードサイトにおける配信ダウンロード数、YouTubeの再生回数やラジオオンエア回数、Twitter上でのツイート数など様々なデータを合算して作られる総合ソングチャート。

星野はデジタル作品のため、CD売上および、ルックアップが加算されない状況のなか、トータルセールス、SNS、ラジオの指標でそれぞれ1位を獲得し、総合チャートのHOT100にて初週1位に。さらに、同“Download Songs”チャートでも1位に輝いている。

そして、今朝発表となったオリコン週間デジタルシングル(単曲)ランキングにおいても、初週18.8万ダウンロードを売り上げ初登場1位を獲得。デジタルシングル(単曲)、デジタルアルバムを通じ、週間デジタルランキングで自身初となる1位を記録。Billboard JAPAN HOT100と合わせて配信限定リリース作品で2冠を達成するのは史上初という快挙を達成した。

また、リリース日の20日からはラジオオンエアも解禁、全国のラジオ局では楽曲の解禁を楽しみにしていた多くのファンからのリクエストが殺到し、8月20日から8月26日における全国主要ラジオ局オンエアチャートで489回という驚異的なオンエア数で2位以下と圧倒的な差をつけこちらも首位を獲得している。(プランテック調べ)

引用:https://www.m-on-music.jp/0000293737/

 

そしてNHK連続テレビ小説半分、青い。』主題歌~というのが基本情報である。まぁ、詳しい解釈やワードの解説はもっとアツいファンにたくさんなされてきたことと思うので、ここは私自身が聴いてどう思ったか、何を感じたか?というところにスポットを当ててお話しさせていただこうと思います。

アイデア

アイデア

 

■❝星野源”を総括する楽曲 音は止まらない!

 

 実際『アイデア』を聴くと、今まで星野源が歌ってきた曲の集大成だってことが明白なんですよね。走り続けたシャレな男が人生を総括・自身のクリエイティビティについて語りました〜的な。冒頭のイントロで『Friend Ship(2016年)に似た木琴の音から始まって、「湯気」「鳥の声」あたりなんてまんま過去曲の引用だし。繰り返される「雨音」、雨の音というのは『恋』のカップリングタイトルから来ているのだろうな…等は多くのファンがすぐに理解するところかと思う。

雨音(House ver.)

雨音(House ver.)

楽しいことと同じくらいいろいろ辛いことあったけど、それを元にして生活を歌って行こうよ、いや、というかこういうの案外楽しいよ!と笑う姿勢が非常に爽やかだ。

それが歌詞中ダイレクトに「つづく日々の道の先を 塞ぐ影にアイデアを 雨の音で歌を歌おう」というところに要約されていて良い。

「音が止まる日まで」というのも、もちろんこれは才能が枯渇するまで~といった後ろめたさある歌詞でなく、普通に死ぬときまでと取って良いんでしょう。生きていれば良いことも悪いこともたくさんあって、そういう出来事が繰り返されていく限り、アイデアがある限り音は止まらないと。

 

■されど日常はつづく 日々の生活とアイデア

 

~ここで唐突に思い出したのは、森博嗣スカイ・クロラの一節です。

 

少なくとも、昨日と今日は違う。
今日と明日も、きっと違うだろう。

いつも通る道でも、
違うところを踏んで歩くことができる。
いつも通る道だからって、
景色は同じじゃない。

引用:森博嗣スカイ・クロラ』 (中公文庫、2004年) 

 

スカイ・クロラ (中公文庫)

スカイ・クロラ (中公文庫)

 

 

スカイ・クロラ』はショーとしての戦争の中で命が消費され、死ねばまた命を与えられて戦場に送り込まれる永遠の生を宿した子供たちが主人公のSF小説。その日々の中で「死ねない退屈さを抱えてどう生活を送っていくべきか」と主人公がモノローグで述べる一節がこれ。

シチュエーションも意味も全く異なるけれど、生きるヒントについて語る口調がちょっと似てるかなあと。日常でのふとした時の幸福な発見、いつか経験した忸怩たる思いすらアイデアになるんだ、ゆえに日々を新鮮に見つめんとする意気は大事にしていかなきゃね~みたいな前向き論。

前にも星野源ドラえもん』について書いたんですけど、彼の曲って圧倒的に社会に溶け込めない人に対する目配せというか、声をあげられないところにいる人をただただ優しく受け入れるみたいな詞が印象的なんですよね。

hothuntergenres.hatenadiary.jp

 でも、本作ではそういった人にも明るい後押し的なテイストを届ける姿勢が見られたのが個人的なストライクでした。地獄でなぜ悪い(2013年)でも扱った私世界をポジティブに自己解釈し直しているような側面もあって。

地獄でなぜ悪い

地獄でなぜ悪い

  • provided courtesy of iTunes

 

■今度は嘘じゃない 「表現は楽しい」と歌う2018年

 

地獄でなぜ悪い』、これは「苦しくて殺伐とした日常を生き抜くためなら嘘でも信じて良いんだ」、生きてさえいればきっと明日は来るんだぞ~というかつての自身への鼓舞含めた風でもあってとても好きなんですけど、今回は❝地獄❞とさえ表現した日常に「生きる意味、発想の余地を見出していこうや!!」という着地になっているのが非常に面白いところ。

この前年発表の『夢の外へ』(2013年)にも「嘘の真ん中を行く」「妄想その手で創れば」といった歌詞が見られ、割と自身を取り巻く❝世界❞に対して及び腰なところが確認できる(これも歌詞内容的には全然悪くないんだけど)ので、その点で言うとかなりの心境の変化が感じられて涙ぐましい。成長とかじゃなくて、あくまで変化。彼の豊かな詩とメロディーが大衆の中で浸透していくにつれ、内容が徐々にポジティブに移り変わっていく様がやっぱ一ファンとしてとても嬉しいのだ。

 

まぁちょっと本題からずれましたが『アイデア』、全てのクリエイター・今を生きる人たちに対して飄々と「もっと人生、表現することで楽しんでこうよ~」と告げる一曲に仕上がっている点が気持ちよくてほんまエンリピ案件なんです。どんどん鮮やかに展開していくPVもハイセンスでいいのでここにURL貼って行きますね…ンはッッッ!!壁が動いt

(完)


星野源 - アイデア【Music Video】/ Gen Hoshino - IDEA